一期一会への感謝

一期一会への感謝
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空港リムジンバス乗り場

電光掲示板に表示された到着時間を確認し、空港リムジンバス乗り場で並ぶ。

「歳のせいなのか、少し長めのフライトになると、かなり疲れるな。」

ただ座っているだけで、どれほどのエネルギーが消費されたのかわからないが、とにかく脳や体が甘いものを欲するのだ。

「バス到着まで15分。どこかで、チョコか飴でも買えばよかった。失敗したなぁ」とぶつぶつ言っていると、外国人女性が私の横に並び始めた。

右手には4輪のキャリーケース、左手には幼児を抱きかかえ、さらに大きめのリックサックを背負っている。

「小さな子供と一緒に旅行は大変そうだな…」と考えながら、鞄からスマホを取り出し、機内モード時に増えたメールをチェックしようとすると、突然声をかけられる。

体験済みデジャブ

「このバスですが、料金をいつ支払えばいいですか?」

降りるときに、このチケットを運転手に手渡せばいいですよ!

「そのチケットはどこで買えばいいですか?」

なるほど。先にチケットを買わずにバス乗り場へ来たのか…。

空港のリムジンバスは、座席確保のため事前にチケットを購入しなければならないが、どうやら知らなかったようである。

バス乗り場向かいに設置された券売機でチケットを買える地方空港も多いが、羽田空港では、乗り場から少し離れた空港ロビーまで戻らなければならない。

しかし、利用している人はそれほど多くないが、実は乗り場付近のバス会社スタッフからチケットを直接購入することができる。私自身、バスの発車時刻に余裕がないときに何度か利用している方法だ。

あそこのスタッフからチケットを購入できますよ!」と伝えたところ、女性は不安な表情から一変し、「ありがとう!」とお礼を言った後、無事チケットを購入した。

「バス到着まで少し時間があってよかった。」と感じながら、再びスマホを見ようとすると、今度は40歳から50歳ぐらいのおばさん二人組が列に並び始めた。

PayPay使えるかな?」どうやら、事前にチケットを買わずにやってきたようだ。まさに “先ほど体験済みデジャブ” である。

外国人に話しかけるような年代ではないので、案の定、一人飛ばして私に数分前受けた同じ質問をぶつけてくる。

あそこのスタッフからチケットを購入できますよ!」バスロータリーに設置された案内ロボットのように答える。

「PayPay使えます?」。「どうでしょう…」。

何故、このおばさんたちはPayPayにこだわるのか。バスに乗る方が重要ではないのか。そもそも、バス会社のスタッフでもない私が決済手段など知っているはずもないだろう

そんなことを想像しながら、PayPay信者のおばさん達が、無事チケットを買うのを眺めていると、数分後バスが到着した。

他人に対して親切な人間ではない

バスに乗り込みシートベルトを締めて、前方を見たところ、先ほどの外国人女性が何やら困っている。

スーツケースはトランクに預けていたが、車内に持ち込んだリックサックの幅が大きく、バスの網棚に入らなかったようだ。

お粗末な英語で聞いてみると「1席しかチケットを買っていないから、この子を膝にのせると荷物を置けない。」と心配している。

確かに、空港のリムジンバスは、新幹線のように足元に荷物を置くスペースがない

バス運転手もこの状況を理解できていたと思うが、英語での説明が難しいと判断したのか見て見ぬふり。何たることか。

しかたがないので、ホスピタリティが低い運転手に横の座席を使っても問題ないか聞くと「大丈夫!」とのこと。前に出る勇気はないが、空気が読める運転手でよかった。

「今日は混んでいないので、横の座席に荷物を置いても問題ないそうです。もちろん、追加の座席代はかかりません。

もはや、どちらがバス会社の人間かわからない。

「本当にありがとう!」と感謝されながら自分の席に戻って座席のシートベルトを締める。

慣れないことをしたからか疲れが増している

そろそろメールをチェックしなければ…」とズボンのポケットからスマホを取り出そうとしたとき、「ごめんなさい。このベルトどうやって締めればいいですか?」と声をかけられる。

横を振り向くと、先ほどのおばさんが、引き出したシートベルトをバックルに差し込もうとしているが上手く入らずに困っている。

よく見ると、横のおばさんの差込口に無理やり取り付けようとしているではないか

恐らくこのマダムたちは、たまたま先頭でバスを待っていて、言葉もわからず大変だろうと外国人を助けていた私をリムジンバスの天使か何かと勘違いしているのだろう。

私は、他人に対してそれほど親切な人間ではないので少しウンザリしていたが、これも何かの縁だろうと、面倒ついでに「こちらですよ。」と取付のアシストを終える

もはや、リムジンバスのプロフェショナルと呼ばれてもおかしくない行動である。

席に戻ってスマホを開き、メールの返信を書き始めたとき「あの~」とまた隣から声が。

「お前達、いい加減にしやがれ!」という心の中で沸き起こる怒りを抑えながら横を振り向くと、氷を割ったようなカラフルな琥珀糖を手渡してきた。金沢で人気のわり氷という砂糖菓子らしい。

「わざわざ、ありがとうございます!」と礼を伝えて、早速一粒口に入れると、心も体が楽になった。

「これが、一期一会なのかなぁ~」と感じながら、続きのメールを書き上げ、清々しい気分で送信することができた

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