赤い帽子
旅先でお土産を見てまわるのは楽しい。
福岡県 明月堂 “博多通りもん“、 宮城県 菓匠三全 “萩の月“、 北海道 石屋製菓 “白い恋人” などの定番が並ぶ棚で、新しいお菓子を探すわけだが、ふと気が付くとモンドセレクション受賞品をかごに入れている。
この品質評価機関のことを何一つ知らないにも関わらず、箱に貼られたラベルに全幅の信頼を置く自分が恐ろしい。
特に “最高金賞受賞” の販促ポップやラベルが目にとまると、もはや商品を見ることなくレジに運んでしまう。
パッケージデザインだけで購入を決める “パケ買い” 然り、”ラベル買い” である。
昨年訪れた “ちぼり湯河原スイーツファクトリー” で見学した「赤い帽子」の焼き菓子アソートは、何と!9年連続でモンドセレクション最高金賞を受賞していた。
マジックワードの “最高金賞受賞” に “9年連続” が加わると、思考停止どころか買わないと損するような不思議な気持ちになってしまうのだ。
新食感、新感覚への好奇心
長年どっぷり浸ってきた他力本願思考に変化を与えたトレンドが「新しい体験」である。
当ブログの数少ない人気記事「ここに住んでるわけじゃない」で紹介した「グミッチェル」をご存じだろうか。
外はパリッ、中しっとりの “新食感グミ“で、初めて食べたときの衝撃は今でも覚えている。
稀にヒトツブカンロのオンラインショップでも販売されるが、すぐに売り切れてしまうので、買いたい人はブログ記事で注意事項を確認してから、グランスタ東京店の行列に並ぶとよいだろう。
他にも、トウモロコシ粉とアーモンドのザクザク生地で分厚いバタークリームを挟んだ新食感バターサンド「ズブリゾローナ」、マシュマロの中に果実コンポートとショコラガナッシュを入れ、表面を果実ソースで凍らせた銀座Restaurant Airの新感覚「生マシュマロ」など、見た目では想像ができない商品は買って食べるしかない。
モンドセレクションで担保された信頼より、未知の商品への好奇心が購買意欲を高めるからだろう。
ただ、心の赴くままに生きてきたX世代の私と異なり、Z世代は想像以上に堅実らしい。
彼らは、金のラベルが貼っていようがコスパに合わない商品は買わないし、新感覚だけでは財布の紐は緩まない。
“つながり志向” に役立つ “インスタ映え” かどうかで、買うか、買わないかを決めるのだ。
「味が気になるから、とにかく買ってみよう!」など唯我独尊の精神は受け入れられないはずだ。
恐らくZ世代が購入する “映えスイーツ” として、新感覚ミルフィーユ「ミルプレッセ」を紹介したい。
モンブラン、ピスタチオ、レモンなど自家製のカスタードクリームを手のひらの大きさ (直径14.5㎝、高さ2.5㎝) に焼き上げた発酵バター100%のパイ生地ではさみ表面をキャラメリゼした商品である。
ミルフィーユを円盤状に仕上げることで、ただかわいいだけでなく、片手で持って食べられるところがスタイリッシュだ。
大阪駅中央北口近くのグランフロント大阪で販売されているので、近くまで行ったら立ち寄ってみてほしい。
サードドアの視点
お土産を語る上で北海道は外せない。
石屋製菓「白い恋人」、ロイズ「生チョコレート」、六花亭「マルセイバターサンド」、ルタオ「ドゥーブルフロマージュ」は誰もが知る人気商品だろう。
この定番土産を持ち帰って、家族や友人、会社の同僚に配れば、喜んでくれることは間違いない。
しかしながら、私個人の思いとして、どうせなら「羨望の眼差し」を向けられながら手渡したい。
定番商品はどれも美味しいが、もらった人の感想は「あ~これね」で、決して「何これすごい!」 にはならない。
及第点でも喜ばれるのは修学旅行の学生だけで、大人の期待値はあなたの想像より遥かに高い。
「サプライズは良いとして、よくわからない土産を失望されたらどうするんだ!」と心配する人もいるかもしれない。
そんなあなたは、物理学者アルベルト・アインシュタインの言葉を贈る。
「失敗や挫折をしたことがない人とは、何も新しいことに挑戦したことがないということだ」
羨望の眼差しは、挑戦する人にしか訪れないのである。
ただ、迷える子羊を放任するのは忍びないので、お土産チャレンジの成功確率を上げる方法をお伝えする。
1つ目は、モンドセレクション受賞歴を見ればよい。
商品の技術的水準が評価されているので、知名度が低くても一定の信頼が担保されるはずだ。
また、仮に失敗しても「モンドセレクション受賞品で期待してたけど、いまいちだったね…」と保険をかけることができる。
2つ目は、ニュースで話題になっている商品を選べばよい。
最近の北海道なら、大丸札幌店の新食感チーズ「スノーホワイトチーズ」 、新千歳空港の「スノーサンド」などが該当する。
あなたが行列に並ぶ苦行をいとわない人なら、ほぼ確実にサプライズを成功させられるだろう。
モンドセレクション受賞品を選ぶような唯唯諾諾の人生を送りたくないし、お菓子のニュースにも疎い、また、行列に並ぶことが苦手な私のような人は、”サードドア” を試してほしい。
やり方はかんたんで、石屋製菓、ロイズ 、六花亭、ルタオ、北海道コンフェクトグループなど、話題になった商品を販売している店舗で “目新しいお土産” を探すだけだ。
例えば、LeTAO (ルタオ) と言えば、北海道産の牛乳を使った生クリームと、イタリア産マスカルポーネチーズ、オーストラリア産クリームチーズをかけ合わせたチーズケーキ「ドゥーブルフロマージュ」が定番だ。
しかし、私がルタオ新千歳空港店で選んだお土産は「まあある ガトーノワール」というフランス焼き菓子 “フォンテーヌ” を使用したクランチチョコである。
小麦の風味が感じられるサクサク食感フレークを、ザッハトルテのような濃厚な味のチョコで上手くコーティングしたスイーツだ。
ずっしりとした味わいの途中で、突然ドライアプリコットの酸味が広がるため、食感から味変まで楽しむことができた。
周りからお土産を褒められたタイミングで「ルタオって、小樽の地名を逆さまにして名付けたのではなく、塔のようなお洒落な店舗をフランス語 “Le Tour Amitie Otaru (親愛なる小樽の塔)” で表現した際の頭文字らしいよ」と付け加えれば、2度賞賛されることは間違いない。
今後、あなたが持参したお土産で「何これ、初めてかも!」との声を聴いたら、心の中でアインシュタインの言葉を噛みしめてほしい。
きっと土産達人になれることだろう。